父の仕事 

2006/09/21 by


昨日は私の父の63回目の誕生日。
「あー!そうだった」、慌てて昼間電話をかけたら母が出て、
ガチャコン、ガチャコン、いつものように後ろで工場の音が。


その音を聞くと「今日も元気なんだな」と思えます。
ふいに父に直接代わってもらうのは恥ずかしくなり、
「おめでとうとこと付けて」とお願いしてしまったのでした。。

と、今日はそんな父の話。。


私の父は、兵庫県、金物の町、三木市吉川町にて、
母と二人で金物工場を営んでいます。
『トダ口金製作所』は、金物の柄と刃を繋ぐ部分の金物全般=「口金/クチガネ」を製作しています。
スプーン教室でもおなじみの道具、
「ノミ」の木槌でたたく柄部分の割れ止めの輪っか=「カツラ」も製作しています。
日本で口金業を営む工場は今はもう数社。
小さな輪っかだけで、私たち兄弟は育ててもらったのですから、
いったい今まで何個作ってきたのでしょう!

家のすぐ続きに工場があるので、小さなころから、
ガラガラガッシャン、ガラガラガッシャン、工場の音をバックに育ちました。


父お手製の不思議な機械のならぶ工場や、倉庫、
鉄の輪っか(主にレゴのように積み上げる)、
製図版があって本ばかりの父の書斎、、それらすべてが遊び場でした。
そういった作る姿を見れての環境は、
今の私の素になっているのだと感じています。

うちは「ワッか屋さん!」である、とは知っていたけれども、
改めて認識したのは大学生になってから。
私が当時買ったばかりのノミセットをもって実家に帰郷した際、
「これ、お父さんの輪っかやわ」と言われたからです。
ぴーんと繋がった瞬間!
知らないうちに父の作った輪っかのノミを使っていたとは!
かなり不思議な、嬉しい気分でした。

木を扱う仕事、木や金物を伝えていける仕事、
父の金物を使う仕事につけたらいいなと、
このとき何となく感じたのでした。
そんなわけで今に至ります。
全くもって両親には心配をかけてばかりなのですが、、。

父は工夫することが好きで、合理的であり、頑固。
自分の興味のあることにはものすごく力を注ぎます。

寝ながらパソコンが打てる装置、
今あらためて見ると、ユーモラスでかっこいい溶接の棚や机、椅子、
作業台(現ぽちてっくスプーン教室のテーブルもです)、
鉄で補強された木の家具も、工場や家のあちこちにあります。
昔持っていた絵本に、
「怠け者の王様が、いつでもテレビが見れるように
テレビメガネを発明して使っていたら怪獣になってしまった」
という話がありました。
テレビが大好きな父が、テレビを天井から釣っていたときは、子供ながらに、
「お父さんが怪獣になってしまう!」と心配したものでした。

(父にとって)「必要なこと」+「工夫する」=「形となる」
それはごく自然に行われています。
そういう気持ちの入ったものは、どんなものでも、
見ていて気持ち良さを感じます。

。。。。

実は、私たちの結婚指輪は、父に作ってもらいました。
上記の指輪をはめている写真は、ノミの柄にはめてある鉄の輪っか=カツラ。
内側に名前も彫ってあります。
なかなかハードなかんじで評判。夫は料理関係、私は木工なので、
日頃着けないぶん、心に残るものをと、お願いしたのでした。

「割れないようにするためのもの」だから、
「これから助け合って困難も乗り越えていく、なくては成らない存在、、」
そういう意味でも素敵かなあと。
カツラの指輪、この父をもつ私達だから、なのですが。。。
もしも、欲しい方、ご連絡ください。


そんなこんなで、63回目の誕生日、「おめでとう」というよりは、
「ありがとう」お父さん。元気でいてね。
娘は父の背中を見て育ったのです。

3 Opinions have been expressed on “父の仕事 ”. What is your opinion?

  1. miyo commented:

    そうやね、やっぱり自営業だと親を見る機会が多くなるので沢山あるかも。それって本当にありがたいことだよね。
     
     当時のあのモーニングコールは今思うと田舎丸出しな行動だよね〜(笑)。都会じゃありえないっ!!!たーさんの声で起きた事もあるし・・・。でもイイッ!素朴すぎるっ!自分で言うのも何やけど、ホントにみんな純粋やったよね。いい思い出です。お客さんが言うように、確かにたーさんの声は通るよ。だって寝てても聞こえるんやで。○十年前に実証済み!

    ところで今日、中学校以来久々に稲刈り手伝いました。両親の凄さを改めて感じつつ、でもこれは若い力がないと厳しい仕事だなとも思いました。この先田舎はどうなって行くのでしょうか。他人事ではないよね。ではでは。

  2. ぽち commented:

    いやー、そういってもらえるとこちらも泣けてきます。ありがとう。
    みーちゃんちも、おっちゃんがうちでお店やってるから「父」の話たくさんあるでしょ。
    故郷で家族やみんなとすごした年月よりも、出てからの年月のほうがこれから長くなって行くと思うけれど、きっとずっと色褪せることはないし、
    どんどん濃くなる気がします。みんなとも出会ったらすごく近く感じる。
    それが故郷というものでしょうか。
    流石に今はみーちゃんちに行っても外から叫んで呼び出さずに、インターホンで「こんにちは」というけれどもね。
    そうそう、最近「声がよくとおりますね」と、お客さんに褒めていただきました。

  3. miyo commented:

    読んでて涙出そうになったぁ〜。危ない危ないっ!トダ口金製作所の音は私もすぐ思い出せるよ。懐かしい音です。遊びに行くといつも聞こえてたな。あの音、私も好き。普段全然忘れてる事なのに、こういうちょっとしたきっかけですぐ思い出せる。子どもの頃の記憶はいろんな形で自分の中に残ってるんだね。そしてそういう環境で育ってきたことにも感謝します。おじさんまだまだ工場の音絶やさないで頑張ってくださいね!

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